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第16回 言語聴覚療法技術セミナー

  「運動負荷の可視化」
発生発語官の運動訓練についてsEMGを用いて客観的に観察する

内容
 言語聴覚士が構音訓練や嚥下訓練などの臨床で日々行う発声発語器官の運動訓練は,『過負荷を基本とする』と教科書などで示されています.加えて,『速筋繊維には高負荷を短時間,遅筋繊維には低負荷を長時間実施する』などの記載も散見されます.しかし,実際の臨床では,可視化することがなければ負荷のかけ方は明確になりません.例えば咀嚼訓練はどのようにすると過負荷となるでしょうか.言語聴覚士の多くが行う舌骨上筋群のレジスタンストレーニングは方法が多数開発され報告されていますが,それぞれの方法がどの程度の筋活動であるかは,まだ十分示されているとは言えません.現状においては,患者様本人が実施しやすい方法や言語聴覚士が提供しやすい方法で行われているのが実情であると思われます.臨床推論を明確にして実施される現代のリハビリテーションにおいては,更なる情報が必要かもしれません.
 加えて,私たち専門職が提供するリハビリテーションは,科学的理論に基づき客観的にその効果を確認しながら行われることが求められます.それが,確実な訓練成果に繋がり,コミュニケーション活動や食べる活動やその支援へとつながるはずだからです.患者様自身もそれを望まれているはずです.
 今回は,前回の技術セミナーで好評頂いた「表面筋電計」を用いて,発声発語器官や嚥下関連器官の運動訓練の負荷に焦点を当ててその可視化も含めて皆さまと一緒に学びたいと思います.表面筋電計は,筋電計測や分析によって様々な筋活動情報が得られますが,今回はモニタリングとして用いて,参加者の皆さまが臨床活動で行っておられる運動負荷と実際の筋活動との関係を観察しご覧頂く予定にしています.

講師 柴本 勇 先生(聖隷クリストファー大学)

2025年01月13日(祝)第16回言語聴覚療法技術セミナー開催報告
「運動負荷の可視化」発生発語官の運動訓練についてsEMGを用いて客観的に観察する

 第16回技術セミナーをZoomによるオンライン形式で開催いたしました。今回も全国から沢山の先生方にお申込みいただきました。ご参加いただきました皆さまには心より感謝申し上げます。
 今回のセミナーは「運動負荷の可視化」-発声発語器官の運動訓練について sEMGを用いて-というテーマで、柴本勇先生(聖隷クリストファー大学教授)にご講義いただきました。
 本セミナーでは、第15回の技術セミナーでご好評頂いたNoraxon社製表面筋電図計を用いて、発声発語器官や嚥下関連器官の運動訓練の負荷に焦点をあて、様々な訓練時の筋活動を可視化し、わかりやすく解説いただきました。また、セミナー後半には参加者の皆さまからいただいたリクエストに応じて筋活動を可視化して下さり、日頃、自身が実施している訓練時の負荷量をイメージすることが出来たのではないかと思います。
 セミナーの録画映像は、会員特典として今年度末まで無料で何度でもご覧いただくことが出来ます。参加できなかった方、復習したい方は会員専用ページからお申込みください。


受講された先生から ご感想

第16回言語聴覚療法技術セミナーを受講して

急性期病院勤務 C・K

 発声発語器官の運動訓練についてのオンラインセミナーを受講させて頂きました。今回のセミナーで特に印象的だったのは、表面筋電計を用いた実演があり、モデルの方が実際に運動訓練を行うことで計測される筋活動をリアルタイムで見ながら学べたことです。口輪筋、咬筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群、胸鎖乳突筋の5つの筋に電極が貼られ、各運動でどの筋がどのくらい活動するのかを見ることができました。例えば、舌を挙上すると舌骨上筋群が活動する。さらに「口蓋に押し付ける」「メンティップをつぶす」というように運動負荷を上げると、それに伴って筋活動も増大します。また、「トゥ」の発声では口輪筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群が活動しますが、「ク」の発声では口輪筋は活動しません。こういった、今まで感覚や知識としてしかわからなかったことが、筋電計のグラフで客観的に見られることで、より運動と筋活動の結びつきを実感することができました。

 また、臨床に直結することも豊富に学ばせて頂きました。実演では、シャキア訓練(頭部挙上訓練)や呼気筋トレーニングなど、普段の臨床場面でよく用いる訓練法が取り上げられました。シャキア訓練を正しいやり方で行ったときの筋活動と、誤ったやり方で行ったときの筋活動を比較すると、両者にはっきりとした違いがありました。誤ったやり方では鍛えたい筋に正しく効かせることができないため、せっかく訓練を行っても十分な効果が得られないことがわかります。それを目の当たりにしたことで、運動訓練は正しい方法で行わなければならない、その患者様に合った運動や負荷量を設定しなければいけない、という意識がとても高まりました。また、柴本先生は、舌圧子で作れるトレーニング器具を紹介して下さったり、初めて目にする訓練法もたくさんご教授下さりました。自分はブローイング訓練ではペットボトルに水を入れて行うことが多かったのですが、空のペットボトルを直接ペコペコ吹くことでも高い効果があること、硬さの違うペットボトルを使うことで患者様に合わせて負荷を調節できることなどは、目からうろこの気持ちでした。ここではとても書き切れませんが、これまで知らなかった訓練法や、負荷の調節の仕方を教わることができ、日々の臨床に活用させて頂いています。

 セミナーに参加する大きな魅力の一つは、モチベーションが高まることだと思います。新しい知識が学べることはもちろん、柴本先生のように臨床・研究両面でご活躍されている先生から教えて頂けることで、「もっと臨床がうまくなりたい」「この訓練はあの患者様に使えるのではないかな」など、気持ちがどんどん膨らんで、エネルギーがわいてきます。

 オンラインセミナーという形で開催して下さることも、自分にはとてもありがたいです。なかなか身近にSTのセミナーや研修を受講できる機会はないのですが、オンラインであれば、遠方に行くのが難しくても、自宅でパソコンで受講できるのでとても参加しやすいです。このように、場所や時間に制限されず、多くのSTが日常的に学べる機会を提供して頂けることは、本当に素晴らしいことだと思います。特に今回のセミナーのように、筋電計のグラフとモデルの方の運動を2画面で同時に映して見られるのは、オンラインならではの良さではないでしょうか。現地開催では遠くて見づらいこともあるかもしれませんが、オンラインでは自分のパソコン画面で間近で見ることができます。そのため、よりじっくり筋活動の波形と運動を観察することができました。

 セミナーの最後には、柴本先生が質問を受け付けて下さり、「このような運動をすると、筋活動はどうなりますか?」といった参加者からのリクエストに応じた実演もして下さりました。また、自分が疑問に思ったことも質問させて頂けるのでより理解が深まりますし、他の方の質問を聞いてその視点に感銘を受けたり、他の先生方が臨床で抱いている疑問や悩みに共感して、学べることも多いです。

 今回のセミナーを受講して、約2時間半とは思えないほど充実した内容から、たくさんの学びや刺激を頂くことができました。講師の柴本先生に、深くお礼申し上げます。また、筋電計のモデルを務めて下さった先生、開催・運営して下さった皆様に、心から感謝申し上げます。ぜひまたこのような素晴らしいセミナーを開催頂けることを、楽しみにしております。

研修会開催報告




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